室生犀星  おそらく彼の小説は文学史上には残らないであろう。金銭的に収入の見込まれる
「小説」を彼は書きたかった。出生や出自に対するコンプレックスが彼を追いつめていった。 売文家という位置に自分を置きつつも、自分の作品の評価や、売値を常に気にせざるを得なかった。
彼は、詩では後世に残ると思われる。それはただ一つ、「小景異情」に於いてである。(ふるさとは遠きにありて思うもの そして悲しく歌うもの〜)
その詩の世界でも、親友の萩原朔太郎には及ばず、勝手にライバルとして意識していた高村光太郎には届かない。
彼の作品には負の意識やコンプレックスが漂っている。それは終生消えることはなく彼を苦しめる。
彼の作品には、そういった負の意識の下に限りない優しさが見え隠れしている。
社会や世間に対してつっぱってつっぱって、しかしながらその下に弱さや苦しみがかいま見えてしまう。その部分が私を引きつけてやまないのだ。

谷崎潤一郎 文豪。その称号が相応しいのはこの人をおいてほかにない。
その作品群を見れば一目瞭然と言えよう。
ごく普通の日常生活を文学の位置までその筆力で高めてしまう。
細雪がその典型。金持ちの4姉妹が遊び暮らしてそれが何故庶民にうけいれられてしまうのだろうか??
その流麗な文章は日本語の美しさを最大限まで引き出している。
源氏物語の訳は数ある訳本の中で一番のお勧め。但し、原文及び与謝野晶子訳を合わせて読まなければ、価値は半減する。

宮部みゆき 近年希にみるストーリーテラー。直木賞は当然の結果と思っている。
とにかく間口が広い。ミステリーをその基本にしつつもこの先の限りない可能性を感じる。
レベル7、竜は眠る等の重厚さに相反して、返事はいらない等に見られる軽さや洒脱さは新人類と言えよう。
それに加えて、震える岩や幻色江戸ごよみなどの江戸物の一群がある。どれか一つであればともかく、これらが並行して発表されそれらがすべてそのジャンルに於いて傑出しているのだ。
私にとって今後が一番楽しみな作家。イチオシです。

司馬遼太郎 もしも長編作家という言葉があるとしたらこの人をおいて他にはいない。
長編と短編との格差を感じるのは私だけでしょうか?
確かに短編でも完成度は高い。しかしながら、彼の細かい時代背景の説明や人間関係、それに加えて心理描写を盛り込んでいったら、その作品は長くなってしまっても不思議ではない。
短編の場合、どこかで妥協しなければならない。それを踏まえると短編はいつか来るべき長編への布石と思えてならない。

池波正太郎 彼の作品を読むと、何か食べたくなる。それも、ざっかけない庶民の和食を。
真田太平記のような武士物も重厚でおもしろいが、庶民の小さな暮らしの方が彼の真骨頂ではないだろうか?

五木寛之 高校時代、好きだった。きっかけは文化放送のラジオ・ドラマの「さらば 青年愚連隊」だった。読んでいるとジャズが聞こえてくる。
作品の中には、かなりつらいものもある。
二回目の休筆宣言以後は一作も読んでいない。

永井路子 文章をわざと軽くしているように感じる。多少難解になったとしても、却ってわざとらしく軽い文体よりは いいような気がするのだが…

宮尾登美子 寡作として知られる。
しかし、一つ一つが重厚で読み応えがある。重厚の中の女性の華やかさがとてもいい。それはもちろん内面的な華やかさだ。

群よう子 抱腹絶倒、でもちょっと悲しくなる時もあるエッセイが多い。みみっちいことを恥ずかしそうに書いてあったりするが、たいていは「自分もそうだわ」と思ってしまう。
だれもがみんな、みみっちいんだ。
「トラちゃん」等の動物のエッセイがお勧め。愛情がひしひしと感じられる。
また「本を乗せた小舟」はその中に登場するすべての本が読みたくなる。

堀田あけみ 名古屋弁がとても生かされている。会話部分をちゃんとした音で聞いたら、また全然違うのではないだろうか。
「アイコ16歳」で高校生作家として文壇に衝撃的なデビューを果たした。
そのみずみずしい感性は現在でも尚維持されている。

宮沢賢治 「アメニモマケズ」から入ると、その他の詩の難解さに驚くことだろう。
彼の生い立ちや宗教観、家族(父)との確執など、背景のあるものの知識があった方が理解しやすいと思う。
また、童話も、同じ。独特の彼の世界は何者も侵しがたいものがある。病魔に蝕まれなかったとしても、賢治はきっと俗世界に生きることは できなかったに違いない。

与謝野晶子 封建的な明治という時代にありながら、親に背き、妻子ある鉄幹のもとに走った彼女。
狂ひの子 我に炎の翅軽き 百三十里 あわただしの旅
鉄幹は、当時「明星」の主宰者であり文壇の寵児だった。晶子にとっては「星の子」ではあったが、現実の彼は傲岸不遜と繊細とを併せ持つ借金だらけのプレイボーイだった。
その彼を支え、たくさんの子をもうけ、年を加えるに従い、したたかさを蓄えていった。
後年、晶子の名声は鉄幹を越えるが、最後まで一人の男を支え続けた。
政治家与謝野馨氏は鉄幹、晶子の次男の子。

アガサ・クリスティー 「そしてだれもいなくなった」と「スタイルズ荘殺人事件」がなかったら、その後の推理小説の手法は変わっていたかもしれない。
クリスマスにクリスティーを、そういって世界中の人々に愛された彼女。
映画にも数多く取り上げられている。オリエント急行殺人事件はよくできていたが、ポワロがでかくてでぶだったのが残念!
セントメアリミードは殺人者がたくさんいるみたいだし、ご近所のうわさ話が怖いので、私は絶対に住みたくない。

スティーブン・キング メイン州には魑魅魍魎が大挙して集まってくるらしい。バンパイア、発火体質、宇宙人。冬山のホテルに行くときは魔よけのお札を持っていくこと。
また、犬は危険なのでなでたりしてはいけない。
どきどき、わくわくの現代サスペンス・ホラーの第一人者。導入部分から引き込まれてしまう。

ジェフリー・アーチャー

ジョン・グリシャム

ヘルマン・ヘッセ 中学1年の時に「車輪の下」を読み、共感を覚える。